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ジェット三郎の『映画&ドラマ&家電のちょっとウンチクよもやま話』

新垣結衣&星野源結婚! ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が何度観ても面白い理由

映画・テレビ業界の片隅で裏方稼業30年のジェット三郎が徒然に語るよもやま話! 星野源との結婚発表で話題となった新垣結衣主演のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の独自考察です!


以下は、2016年にTBS系で放映された連続ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の内容に詳細に触れております。まだご覧になっていない方は、Amazonプライムなどのサブスクリプション動画サイトなどでご鑑賞してから本編をお読みください。

 

何度観ても面白い理由1 第1話のドあたまからの衝撃のパロディ炸裂!

ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は、まず第1話の冒頭から衝撃的だった。

 

観始めた視聴者は、「え、ドラマのはずなのに、なんで『情熱大陸』なの?」と驚いたはずだ。

 

新垣結衣演じる派遣社員・森山みくりの「情熱大陸」のインタビューが始まったのだ。

 

それも、フォント、タイトル、ロゴ、主題歌、ナレーション、構成に至るまで、全てが本物そっくりなのだ!

 

実は、海野つなみが描く原作漫画の『逃げるは恥だが役に立つ』の第1話冒頭も、パロディからスタートしている。もっとも、TBSの「情熱大陸」ではなく、テレビ朝日系の「徹子の部屋」に森山みくりがゲストとして登場し、玉ねぎお団子ヘアーの司会者相手に、派遣社員でリストラに至った経緯を語っているのではあるのだが。

 

と、このように原作漫画もドラマ版も、パロディからスタートした『逃げ恥』だが、その後も有名コンテンツのパロディは止まらない。最終回までパロディにつぐパロディの連続なのだ!

 

TBS「情熱大陸」(1話&4話&8話)

TBS「NEWS23」(2話)

TBS「ベストテン」(7話)

TBS「東京フレンドパーク」(最終回)

これらは、製作母体がTBSだから、パロディ化するのも簡単だっただろう。

 

しかし、ドラマ『逃げ恥』は、他局の有名コンテンツも容赦なくパロっている。

ざっと話数別に上げるだけでも、

 

第1話

TBS「情熱大陸」

アメリカABC制作TVドラマ「奥さまは魔女」(日本での放映はTBS)

 

第2話

TBS「NEWS23」

TBS「異論!反論!オブジェクション」

 

第3話 

フジテレビ アニメ「サザエさん」(これは原作漫画にもある)

フジテレビ「大改造! 劇的ビフォーアフター」

フジテレビ アニメ「アルプスの少女ハイジ」

 

第4話

テレ東 アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(大学時代の元カレの名はシンジくん!)

NHK Eテレ「0655&2355」

TBS「情熱大陸」

 

第5話

NHK政見放送

 

第6話

JR東海CM「そうだ京都、行こう」

TBSドラマ「パパとムスメの7日間」(ガッキーの制服が同じ!)

テレ東 アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(今回の高校の元カレの名はカヲルくん!)

 

第7話

バスガイド

マッチ売りの少女(これも原作漫画にもある)

TBS「ベストテン」

 

第8話

NHK&民法各局 オリンピック中継(原作漫画にもあり)

TBS「情熱大陸」

テレビ朝日「朝まで生テレビ」

 

第9話

テレビ東京「なんでも鑑定団」

 

第10話

テレビ朝日「新婚さんいらっしゃい!」

恋愛シュミレーションゲーム

 

最終回(第11話)

NHK「真田丸」(星野源は徳川秀忠を演じている)

TBS「東京フレンドパーク」

 

この他にも、林修先生の「今でしょ!」や武田鉄矢の「金八先生」を、石田ゆり子演じるみくりの伯母・土屋百合がパロっているが、ここでは省略する。

 

1回見ただけでは分からない、これらパロディの数々は、2回3回と繰り返し視聴するたびに、「むふふ」と嬉しくなってしまうものである。

何度観ても面白い理由2 みくり視点と平匡視点で、全然変わる恋愛感情の変遷

 

「逃げ恥」の主演は、新垣結衣である。これは、エンドクレジットを見れば一目瞭然だ。

主役から当然なのだが、物語を主体的に動かしていくのは、新垣結衣演じる森山みくりである。

その上、みくりは妄想癖があり、モノローグが多い。

自然、視聴者は、みくりの視点で物語を共に歩む形になるはずだ。

 

しかし。

助演であるはずの星野源演じる津崎平匡(ひらまさ)もまた主人公なのである。

 

特に、この男の「プロの独身」であるが故の、凝り固まった先入観とクソ真面目な考え、恋愛に奥手でストイックすぎる態度もまた、物語を動かしていく起爆剤(ガソリン)となっている。

 

で、一度、みくり目線で最終回まで見終わった人も、今度は、平匡目線で1話から見直してほしい。

 

するとどうだ。

全く違う楽しみ方がある。

 

そのポイントはいくつもあるのだが、是非とも平匡目線で、「いつから、みくりは、本気で平匡のことを好きになったのか」だけに注目して、2度目のドラマ鑑賞を楽しんでほしい。

 

ここで間違ってほしくないのは、平匡目線で物語を見返すのではあるが、「平匡がいつからみくりのことを好きになったのか」を考察するのではない、というところだ。

 

だって、平匡がみくりを好きになった瞬間は、実は、かなり簡単に推察できちゃうから。

ここでは、あえて答え合わせをするつもりはないが、結構序盤から、平匡はみくりに夢中になっているのが手に取るように見て取れる。

 

一方の、みくりが平匡に心惹かれ始めたのはいつなのか、これはなかなかに難しい。

 

ていうか、ドラマ版は、あえて、そこをぼやかしている。

 

原作漫画では、ドラマ版にも使われている、とあるエピソードのとある瞬間に、平匡に対しての恋心をモノローグで呟いているのだが、ドラマ版ではそのモノローグをバッサリとカットしているのだ。

 

さて、そのシーンはどこなのか? そこを探し出すのを楽しみながら、2度目を観てほしい。

 

一つだけヒントというか、平匡目線でのみくりの感情の移り変わりを推察する楽しみ方をお教えしよう。

 

第3話で、百合ちゃん、風間さん、沼田さんたちと、山梨へブドウ狩りドライブに行ったついでに、お寺(山梨県勝沼の大善寺)に立ち寄るエピソードがある。(原作漫画では、いちご狩りだったが)

 

そのお寺で、みくりが平匡に対し、「私は平匡さんが一番好きだな。しみじみと、しっくり、落ち着いて」とポツリと語るのだが、さて、この時、みくりは既に平匡に心惹かれていて、このセリフを言ったのか? それとも、まだ自分の恋心に気づかず、ただ、なんとなく、このセリフを呟いてしまったのか?

 

たったこれだけのことでも、みくりの恋心があってのセリフだったのか否かで、ドラマの楽しみ方が全然違ってくることは一目瞭然だ。

 

とにかく、騙されたと思って、一度、平匡目線で、みくりの恋心の変遷を楽しんで視聴してみてほしい。新たな驚きや発見が必ずあるはずである。

 

何度観ても面白い理由3 原作漫画からのドラマ化は、まさしく因数分解だった!

海野つなみ著「逃げるは恥だが役に立つ」第9巻(レギュラーシリーズの完結巻に当たる)

講談社Kiss連載/講談社KC Kiss 1巻~11巻(第39回講談社漫画賞少女部門受賞作)

 

ドラマ「逃げ恥」では、2016年の放映当時、数多くの名言、名セリフが話題となった。

 

「平匡さん、私の恋人になってもらえませんか?(中略)これは、平匡さんの自由意志です」(第4話)

「やってみましょう! まずはハグから!」(第5話)

「これから、303号室に帰ろうと思います。全部取っ払った答えがそれです」(第8話)

「平匡のばかやろー! 面倒くさいんだ、お前は! バカバカ、バーカ、バーカ」(第9話)

「触っていいんです。平匡さんだから、いいって思ってるのに。どうして分かってくれないんですか」(第9話)

「それは、好きの搾取です。(中略)私、森山みくりは、愛情の搾取に断固として反対します!」(第10話)

などなど。

 

それらの中で「私、自分の気持ちを因数分解してみたんです」(第8話)というのもあった。これは原作漫画にもあるのだが、ドラマの方がより深く、そして分かりやすく説明してある。

 

この「因数分解」こそ、ドラマ版が社会現象までに大ブレイクするに至った重要な「キーワード」であると、私は考えている。

 

その説明に入る前に、ドラマ版の脚本を担当した野木亜紀子なる人物について少しだけ掘り下げてみる。

 

意外に思われるかもしれないが、原作漫画は、作者の海野つなみ自らが単行本3巻あとがきで、「おおよそのエンディングは考えてあるけど、(中略)演劇でいうエチュード(即興劇)みたいな感じで描いているので、先のことはよくわかりません」とコメントを残していることからも分かるようにガチガチの構成・プロットを作っているわけではない。

 

一方で、ドラマ版は、原作漫画のエピソードを生かしつつ、かなり綿密な構成と伏線の係り結びを構築している。この違いがなんであるかの答えが「野木亜紀子による原作漫画を因数分解した結果」であると私は考えている。

 

野木亜紀子がドラマ版の脚本を担当したTBSドラマ「空飛ぶ広報室」(新垣結衣主演)のPRで、原作小説を執筆した有川浩がインタビューに応えているのだが、そのコメントからも、脚本家野木亜紀子がいかに優秀かが分かる。

 

以下はTBSのサイトより引用である。

 

有川浩「野木さんが脚本を担当してくださるのであれば、何にも心配いらないなと思いました。脚本を読ませていただいたとき、すべてのオリジナルエピソードとオリジナルキャラクターが原作で書かれていてもまったくおかしくない馴染み方でした。原作をものすごく正しく読み解いて、その上できちんと取捨選択をやってくださっています。(後略)」(引用終わり)

 

有川浩がいみじくも語った「原作をものすごく正しく読み解いて、その上できちんと取捨選択をやってくださっています」、これこそが因数分解なのだ。

 

ん? ちょっと、何言ってるか分からない?(byサンドイッチマン富澤たけし)

 

そうですね。自分でも書いていて、ちょっと回りくどいと思ってました。反省します。

 

では、「因数分解」の具体例を挙げてみる。

 

それはズバリ、ドラマ版のみくりの感情の揺れ動きの大きなキーワードとして「小賢しい」を、野木亜紀子が選択したところにある。

 

原作漫画の作者・海野つなみは、単行本9巻(レギュラーシーズン最終巻)で、「本当は、みくりが小賢しいというのは、あまり強く書いたつもりはなく、過去エピソードの流れで、元カレからのただの悪口の一つとして書いたにすぎなかった。にもかかわらず、ドラマ化の顔合わせの際、複数のスタッフやキャストたちから「小賢しく頑張ります」と言われ、戸惑った」と書いている。

 

そこで慌てて、ドラマが放映される前の漫画版39話で、平匡の言葉で「みくりさんを小賢しいと思ったことはない」と否定させてみた、と告白している。

つまり、この時点では、原作者の海野つなみは、「みくりが、元カレたちから小賢しい小賢しいと言われ続けたことが、一種のトラウマとなり、自尊感情を自ら低くさせてしまっている」というドラマ版における大きな設定を狙っていたわけではなかったのだ。

 

にもかかわらず、原作者の意向に反する形で、ドラマ版は、放映を見始めた海野つなみは驚いた。

「ありゃりゃ、やっぱりドラマ版では、みくりちゃんは小賢しい女になってしまっているのね」と。

本人自ら「小賢しさフィールド全開!」とまで言い切っているドラマ版森山みくりに戸惑っていたようだ。

だが、最終回(第11話)で、海野つなみはまたしても驚くことになる。

 

★最終回のクライマックスシーンの書き起こし(野木亜紀子脚本、金子文紀演出)

 

【青空市の成功を前に】

みくり「こんな私の小賢しさはどこに行っても嫌われるんだなと思っていたけど、青空市の仕事ではむしろ喜んでもらえて……。小賢しいから出来る仕事もあるのかもしれません」

平匡「(きょとんと)小賢しいって何ですか? 言葉の意味は分かるんです。小賢しいって相手を下に見て言う言葉でしょう? 僕はみくりさんを下に見たことはないし、小賢しいなんて思ったこと、一度もありません」

 

【それを聞いたみくりは、感極まって、面前でハグし、(いや、ここはハグなんてもんじゃなく、強く抱きしめる)】

【戸惑う平匡も、強く抱きしめ返す】

 

みくり「ありがとう」

平匡「何の? ありがとう……で?」

みくり「大好き!」

(2016年12月20日TBS系放映「逃げるは恥だが役に立つ」最終回より書き起こし引用終わり)

 

自分が、原作漫画で、「いやいや、みくりはそれほどは小賢しくはないですよ」的な軽いニュアンスで、平匡に言わせたセリフ「みくりさんを小賢しいと思ったことはない」が、なんとなんと、最終回のクライマックスの一番のシーンで最高の伏線回収として使われていることに、海野つなみは「あらーとびっくりしたのでした」「結果的によかったというか」「ここを描いてよかったなあと思いました」と素直な感想を述べている(講談社KC Kiss『逃げるは恥だが役に立つ』第9巻あとがきより引用)

 

ここに、脚本家・野木亜紀子のすごさがある。

 

上の方にも書いたが、実は、ドラマのエピソードは、そのほとんどが原作漫画にあるものだ。

しかし、微妙にニュアンスだったり、時系列が違ったりする。それはもちろん、漫画とドラマという表現手段に違いがあり、どっちがいい悪いでは決してないのだが、脚本家・野木亜紀子のすごいところは、「見事に因数分解」し、エピソードの持つ意味を深く濃く抽出している部分にあると思う。

 

一方で、原作漫画を因数分解した結果、原作漫画の大きなエピソードをあえて、まるっとごっそりカット(削除)したシーンもある。これも実は因数分解なのだ。

 

漫画とドラマの両方を観ていないと意味が分からないだろうから詳しくは省くが、原作漫画にあってドラマにはない大きなエピソードとして、「正月の、実家へのお泊まり」編が挙げられる。

 

これをバッサリとカットすることで、ドラマ版の社員旅行という名の新婚旅行(第6話)で、初めて、同じ部屋で隣り合わせに寝るというシーンが強く抽出できている。

 

これなどは、因数分解において、足し算引き算をたすき掛けで、カッコ×カッコの掛け算の形にすることで見事にグループ分けが出来てしまうかのように、と、たとえてみたが、お判りだろうか?

 

一方で、原作漫画にはなくて、ドラマだけにある有名なシーンといえば、同じ第6話での、日野さんからプレゼントされた「とぐろターボ」であろう!

 

あのシーンは、原作者の海野つなみさんも大爆笑大絶賛していたことを追記するとしよう。

 

何度観ても面白い理由4 星野源作詞作曲歌唱の「恋」は、比翼連理の誓いをイメージ?

 

比翼連理(ひよくれんり)とは、男女の情愛の、深くむつまじいことのたとえである。

「比翼」は、雌雄それぞれ目と翼が一つずつで、常に一体となって飛ぶという想像上の鳥であり、「連理」は連理の枝のことで、根元は別々の二本の木で幹や枝が途中でくっついて、木理が連なったもの。

 

僕は、ドラマ版『逃げるは恥だが役に立つ』のエンディング曲である星野源の『恋』を初めて聞いた瞬間、頭の中に「比翼連理」という言葉が浮かび上がったことを記憶している。

 

とはいえ、『恋』の歌詞を読んでみても、別に「比翼連理」の「ひ」の字も出ちゃいない。

もしかしたら、冒頭に出てくる「カラス」だったり、2番に登場する「白鳥」だったりから「鳥」をイメージし、その上で、サビの「超えていけ」を「羽ばたいていけ」と勝手にイメージ変換してしまったからかもしれないのだが、新垣結衣と星野源が結婚発表をした今となっては、やっぱり歌のテーマの一つが「比翼連理」だったんじゃないか、としみじみと思ってしまうのだ。

 

もっとも、「比翼連理」は仲睦まじい男女の姿であるが、『恋』は、「夫婦を超えていけ」と歌っているように、ある意味、男女だけでなく、男性同士だったり、女性同士の恋愛にも通ずる歌となっているところがさすが星野源だなぁと感心する。

 

レギュラー放送回でも、古田新太演じる沼田頼綱と、成田凌演じる梅原ナツキが、それぞれゲイであるが故の悩みに苦しみ、スペシャル版においても、石田ゆり子演じる百合ちゃんに、高校時代の同級生の西田尚美演じる花村伊吹が恋愛対象として恋心を抱いていたと告白するなど、そういう多様性を描いた物語にもしっかりと対応しているエンディング曲だったのだ。

 

 

何度でも言います!「逃げ恥」は何度観ても毎回面白い! 毎回涙する! 毎回感動する!

どうですか?

 

新垣結衣さんと星野源さんの結婚のきっかけとなったドラマ版『逃げるは恥だが役に立つ』、もう一度観てみませんか? たくさんの新しい発見と喜びに気づかされるはずです。

 

 

逃げるは恥だが役に立つ

2016年10月11日(火)~12月20日(火)

最高視聴率20.8%(最終話)

 

◆原作:海野つなみ(講談社『Kiss』掲載/講談社KC Kiss刊) 

◆脚本:野木亜紀子

◆出演:新垣結衣/星野源/石田ゆり子/古田新太/真野恵里菜/大谷亮平 他

◆演出:金子文紀/土井裕泰/石井康晴

◆プロデュース:那須田淳/峠田浩/宮崎真佐子

◆製作著作:TBS

 

 


ジェット三郎:愛媛県生まれ。映画・テレビ業界の片隅で裏方稼業30年。主戦場はドラマ畑だが、時々情報・報道・バラエティー番組なども手掛ける。好きなお酒は芋焼酎のロック。

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