■新作ショートショート小説のご案内
新波出版では酒井直行による最新ショートショート小説「四国独立」を、株式会社ニューウェイブ発行の医療顧客様向け「Fカルテットニュース」にて
無料配布しております。
※本作品は一般販売を行っておらず、株式会社ニューウェイブの医療顧客向け「Fカルテットニュース」での限定配布となります。
読者の皆さまから高い評価をいただいております。今後もショートショートの新作発表を続けてまいりますので、ぜひご期待ください。
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ショートショート小説「四国独立」 作:酒井直行
「われら四国4県は、本日をもって日本からの独立を宣言いたします!」
その朝、四国4県、愛媛県・香川県・徳島県・高知県の各知事たちが一斉に発表した言葉は瞬く間に全国を騒然とさせた。そして独立国家「四国」を名乗り、独自の通貨「遍路(HENRO)」を導入。国内外に向け、4県の観光資源や特産品、つまり愛媛のミカン、香川のうどん、徳島のすだち、高知のカツオを売りにしたアピールを開始する。当初は、広告代理店が仕掛けた大掛かりな広告宣伝かと思っていた他県、そして東京だったが、四国の4知事は本気だった。航空機、フェリー、鉄道、道路で四国に入る際には例外なくパスポートを要求し、四国に入国後は、「円」は使えず、高い手数料を払って「遍路」に両替しないといけなかった。
ビジネスや観光で四国に入る他県の人たちはさぞ文句を言うかと思いきや、あにはからんや、彼らはこの独立騒動を一種のエンターティメントとして喜び、四国への観光客は従来の20倍に膨れ上がった。その独立ブームに、九州や北海道も黙っちゃいなかった。彼らも次々と独立宣言を発し、気づけば、日本は、東京都以外のほとんどすべての地方行政が独立宣言をするまでになった。
不思議なのは、日本国が、四国はもとより、九州独立や北海道独立に、なんら妨害も抵抗もしなかったことである。かつて昭和の時代に、東北の小村「吉里吉里村」が独立宣言をした際はあれほど国による妨害工作をしたにもかかわらず、である。それもそのはず、実は今回の独立宣言、すべて日本政府が隠密裏に仕掛けた大掛かりな「地方活性化」プロジェクトであり、この国家戦略に全国の地方自治体が飛びついただけの話だった。
とはいえ、いつまでも、日本の中に、かりそめとはいえ独立国家が存在していいはずがない。国内外からの観光客で、地方各地が十分に潤った頃合いを見計らい、先陣を切って四国4県の知事たちが「今日をもって日本国に戻ります」と宣言する。それをきっかけに全国で独立宣言をしてきた地方行政の国々(道府県)も、次々と日本国に戻る宣言をして、この一連の独立宣言は幕を閉じたかに思えた。
ところが。
それまで、ずっと我関せずと沈黙を守り続けていた沖縄県の知事が、東京の政府官邸1階ロビーにて記者会見をするという。そして集まったマスコミ、そして日本政府関係者を前に宣言する。
「本日をもって沖縄県は日本国から独立し、元の国名『琉球王国』となります」と。その言葉に日本政府関係者一同は目を見開き、押し黙った。会場には冷たい空気が張り詰めた。沖縄県知事の眼差しは、他のどの地方とも異なる覚悟に満ちていた。沖縄の過去の歴史を知っている日本政府関係者にとって、彼の宣言が他の県の独立宣言とは全く意味合いが違っていることを認識せざるを得なかった。明治維新直後、独立国家「琉球王国」を強引に日本国に帰属させただけでなく、太平洋戦争後はアメリカの統治下に置かれた沖縄は昭和48年までは日本なのに日本ではなく、そして復帰後も沖縄は「基地の島」として日々の暮らしを縛られてきた。そんな沖縄県民にとって、四国4県からスタートした全国各地の独立宣言、いや日本政府が仕掛けた「地方活性化プロジェクト」は、ただの悪ふざけにしか見えなかった。沖縄を馬鹿にしているのかさえ思った。全国が、かりそめの独立宣言で観光客が増えただ、インバウンド効果だと浮かれている中、沖縄の人たちは、長年の恨みをついに爆発させてしまう。
日本中がニセの独立宣言で盛り上がっている中、沖縄は極秘に隣国台湾や中国と綿密な協力関係を築き、更にはアメリカ合衆国とも経済・防衛面での強力な支援を取り付けていた。
「私たちは昭和48年以降も、ずっと日本の一員じゃなかった。だから独立し、元の琉球に戻るだけです」沖縄の人々の想いを代弁する沖縄県知事の発した言葉に、日本政府関係者は誰も反論できなかった。
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新波出版では、想像力を刺激する作品づくりにこれからも取り組んでまいります。
酒井直行
愛媛県出身。脚本家(日本脚本家連盟員)、小説家、漫画原作者。
代表作に、ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」「医療捜査官 財前一二三」「京都金沢殺人事件シリーズ」、特撮ドラマ「忍風戦隊ハリケンジャー」、アニメ「ドラえもん」、漫画「裁いてみましょ。」「Pハート」、ゲーム「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」「鬼武者」など。
新波出版では、Amazonkindleにて
Amazon「事件記者〈報道癒着〉」Amazon「死への目撃者」を刊行。
※これからも不定期で、酒井直行作の「ショートショート小説」を発表していきます。お楽しみに!