町のドクターに聞く「健康豆知識」
新居浜市内のお医者さんから、季節ごとの病気やケガへの対策や対応方法、健康促進のための情報をお聞きします。
現在日本は、高齢化社会になってきています。
平均寿命は世界1位で90代の日本ですが、健康寿命の方は70代と実は若く、差が20年もあります。
健康寿命とは、介護保険などを利用しないで生きていく最高の年齢のことです。健康寿命を短くする原因は様々ありますが、現在は、脳血管障害、整形疾患、精神疾患、そして今回のテーマである「認知症」がほとんどを占めています。私は、日本の健康寿命延伸のカギは、30~40代の健康管理にあると考えています。
基本的に病気の状態にはいくつか段階があります。
軽症、重症などですが、これは認知症もしかりで、まずは、自分がどの段階にいるのかを知ることが最も大切です。
そのうえで、「ものわすれ」とは? 「MCI」とは? 認知症の予防はどうすれば? 軽症の場合の過ごし方は? そして、家族はどう行動したらいいのか? など、皆さんが疑問に思っていることを前後編の2回にわたってご説明していきます。
人は、わからないものを怖がってしまう傾向にあります。
病気について知ることで正しい理解を深め、人生の備えをしていきましょう。
※前編では、「ものわすれ」と「MCI」についてお話します。
※後編では、「認知症」と「フレイル」、「年齢に応じた認知症予防」についてお話します。
ものわすれの原因は、大きく5つに分かれます。
・1つ目は、脳の疾患
・2つ目は、精神の疾患
・3つ目は、内科疾患
・4つ目は、薬物関連
・5つ目は、その他難病
です。
■脳の疾患
脳梗塞、脳卒中(脳出血など)、脳腫瘍、水頭症など、神経の変性が原因となる認知症です。
■精神の疾患
うつ病、統合失調症などです。
■内科疾患
脱水、貧血、花粉症、睡眠時無呼吸症候群、その他多数の内科疾患が原因になる場合もあります。
■薬物関連
ある程度の中毒症状はもちろん、風邪薬や、睡眠薬(眠剤)も年齢と体質によっては、ものわすれをきたすおそれがあります。しかし、「睡眠薬を飲む=認知症になる」は間違いです。
難病については、今回のコラムでは割愛します。
このように、認知症と一言で言っても原因は様々であり、まずは「自分の状態を知ること」が大切です。
原因がはっきりしていないのに、漫然と認知症の薬を飲んでも治りません。ものわすれが進行したからと言って、何年も認知症予防薬を飲んでいて、数年後に再度調べてみたら脳腫瘍だったという事例は脳神経外科ではよくあることです。
また、ものわすれの中には、原因がはっきりすれば治る可能性が高い部類のものもあります。ものわすれを自覚したなら、ものわすれの原因を科学的に調べに行きましょう。CTなどの画像診断や、採血による血液検査で調べることができます。
最近テレビでも「MCIが組み込まれた保険があります」といった話題を耳にするようになってきました。
では、MCIとは何でしょうか?
MCI(Mild Cognitive Impairment)とは「軽度認知機能障害」のことで、認知症予備軍になる可能性のある状態を表します。MCIは、遺伝的になりやすい体質の人が存在しており、近年は血液検査によってそのリスクを判定できるようになってきています。
ただ、MCIになりやすいからと言って必ず認知症になるというわけではありません。また、家族が認知症だから自分も認知症になるということもなく、その確率は4%程度と言われています。
MCIと診断された場合、認知症になる確率は5年で50%程度とされています。しかし、生活習慣病や生活環境を改善することで認知症への移行は防げます。このことからも、やはり自分の状態や遺伝的リスクを早期に知っておくことが大切だと言えます。生活を見直すことは今後の人生設計の見直しにも繋がります。できれば、30~40代のうちに検査を受けておくのが良いでしょう。
■ものわすれの検査
当院では、「ものわすれ」の程度を調べる検査をします。
ものわすれにも、言葉、単語(人や物の名前)を忘れるタイプから、 生活に支障が出るタイプまで、様々な症状があります。生活に支障のない程度のものわすれであれば、基本的に心配ありませんが、一人暮らしに支障が出るものわすれが出始めたら認知症に変わってきているサインです。
いずれにしても、心配なことがあれば、まずはご相談ください。保険適応です!
■MCIの検査
コラムの中でもお話したMCI(軽度認知機能障害)を調べる検査もできます。こちらは、採血による血液検査です。都市部では、2~3万円以上からが相場の検査ですが、当院では1万5千円ほどで実施しています。
保険適応外で実費がかかるため、こちらの検査を就職祝いや、父の日、母の日のプレゼント代わりに手配される方もいます。
まだ具体的な症状はない30代~40代の方にとっても、ご自身の認知症リスクが高いかどうかの判断材料になります。早期発見、早期の生活改善のためにもおすすめです。ぜひご相談ください。
後編では、認知症とフレイル、年齢に応じた予防方法についてお話しています。
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