あかがねミュージアム情報
にいはまSDGs アート・フェスティバル 2019 ~アートで世界を平和にしよう~
今年、新居浜美術館主催で行われる「にいはまSDGs アート・フェスティバル 2019」について、阿部館長(前教育長)に聞きました。
近年さかんに言われ注目を浴びているキーワードに、「SDGs」という言葉があります。
なぜ今SDGsがピックアップされ、各都市で対応を迫られているのでしょうか?
新居浜市・あかがねミュージアムでの試みから、その背景を探ります。
SDGsって何なの?
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
持続可能な世界を実現するための目標として、貧困や教育、環境・資源・格差・産業などの社会問題全般の17項目・169のターゲットから構成されています。
誰がいつ決めたの?
2015年9月に開催された国連サミットの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」内で採択されました。
国連に加盟している先進国はもちろん発展途上国までの193か国が、2016年から2030年までの間にこの17項目を達成する為に様々な取組みを行う必要があります。
Youtubeに分かりやすい動画がありましたので紹介します。
SDGs17項目の詳細
- 貧困をなくそう
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終始符を打つ
- 飢餓をゼロに
飢餓に終始符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
- すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
- 質の高い教育をみんなに
すべての人に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
- 安全な水とトイレを世界中に
すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
- 働きがいも経済成長も
すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
- 産業と技術革新と基盤をつくろう
強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
- 人や国の不平等をなくそう
国内および国家間の格差を是正する
- 住み続けられるまちづくりを
都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
- つくる責任 つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源を持続可能な開発に向け保全し、持続可能な形で利用する
- 陸の豊かさも守ろう
陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
- 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
- パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
身近な話からスケールの大きな話まで、多様な内容が盛り込まれています。
各項目の詳細については下のサイトに詳しく載っていますので、気になる方はご覧ください。
SDGsを達成する為の担い手を育むための教育が「ESD」
立派な内容が書かれているSDGsですが、やはり達成されなければ意味がありません。
SDGsに提起されている目標を自分の問題ととらえ、身近なところから取り組むことによって目標達成に貢献出来る人物を育てる為の教育として「ESD」があります。
そしてその「ESD」を推進する拠点として「ユネスコスクール」が存在しています。
世界で11,000校以上、日本では1,116校(2018年10月現在)が認定されていて、新居浜市内では全小・中学校と新居浜南高等学校がユネスコスクールに認定されています。
新居浜市内のユネスコスクール認定校
浮島小学校
大生院小学校
金子小学校
金栄小学校
神郷小学校
角野小学校
惣開小学校
高津小学校
中萩小学校
新居浜小学校
垣生小学校
船木小学校
多喜浜小学校
泉川小学校
宮西小学校
東中学校
船木中学校
南中学校
泉川中学校
大生院中学校
角野中学校
中萩中学校
川東中学校
北中学校
西中学校
別子小・中学校
新居浜南高等学校
ユネスコスクールの加盟校一覧を見ると、新居浜市の学校の圧倒的な認定率に驚きます。
なぜ新居浜にここまでユネスコスクール認定校が多いのでしょうか?
阿部義澄館長(前教育長)に聞く
新居浜市内の小・中学校がユネスコスクールに認定された当時、新居浜市教育委員会で教育長を務めていた「阿部義澄」さん(現在あかがねミュージアム・新居浜市美術館長)にその経緯を聞いてきました。
きっかけは2004年の台風災害
2004年、新居浜市は3つもの台風に襲われ市内の広い範囲で爪痕を残しました。
被害にあったのは学校施設も同じで、ある施設では土砂災害で寮が埋もれ、ある学校では床上浸水の影響で給食室・教室が使用不能になりました。
そしてある土砂崩れの現場では、高校3年生が就職の合格通知を前にして亡くなりました。
阿部館長も災害の中、自分の身の回りも手付かずで災害対応に追われました。
過去数十年大きな災害に見舞われる事のなかった新居浜市では、市民も慣れない災害対応に戸惑い、避難活動や初期救出がスムーズに進みませんでした。
利己主義「他人事」を捨て、共助「助け合い」の心を市民が互いに持っていればもっと助かった命があったかもしれない…。
救助や復旧も迅速に進んだかもしれない…。
事実、学生寮に土砂が流れ込む等甚大な被害が発生した「えひめ学園」では、教師の判断によって事前に避難が完了し、避難していなければ失われていたかもしれない生徒達の命が救われています。
共助の精神を育むには
新居浜でいざという時に共助の気持ちを持って市民同士が助け合える環境を整えるにはどうすればいいか…。
阿部館長は教育長という立場にいる身として考えました。
災害だけでなく、このグローバルの時代、海水温上昇や少子高齢化など、様々な問題がある中で子供たちは何を身に付けておけば良いのか。
考え、調べる中で目に留まったのが、『ユネスコスクール・ESD』の取組みでした。
日本では「ユネスコといえば世界遺産」という認識が多くを占めていますが、実は「ユネスコ」は国際平和と人類共通の福祉の実現の為に、国民間の協力を促進する事を目的とした組織です。
「国際平和と人類共通の福祉」を実現する為に様々な施策や提起を行い、そのうちの1つとして「SDGs」があり、その他には「ユネスコスクール」や「世界遺産」も含まれています。
「友達同士で助け合う」「つながりを持てる」「誰とでもコミュニケーションが取れる」そんな共助の心を持つ事ができる人物を育てるには、ユネスコスクールとESDはぴったりの仕組みでした。
地元企業・大学等の強力なバックアップ
2004年の災害から過ぎる事8年、2012年の新居浜南高等学校のユネスコスクール認定から長い道のりが始まりました。
各小・中学校でそれぞれ違うテーマでESD活動を行う必要がありましたが、その活動予算を限られた学校予算のどこから捻出するかが問題になりました。
ESD活動専門の講師なども、学校や教育委員会の中では不足していました。
それを解決したのがコンソーシアム(共同企業体)でした。
CSRという観点から住友金属鉱山や住友化学などの地元企業に出資を募り、講師の派遣を新居浜高専や総合科学博物館に依頼、鳴門教育大学などがアドバイザーとして、もちろん愛媛県教育委員会や新居浜ユネスコ協会が事業推進のバックアップに。
これらがコンソーシアムとして強力に連携する事で、新居浜でのESDが可能になりました。
こうして予算的な問題も解決し、2017年に新居浜市の全小・中学校がユネスコスクールに認定されました。
このような取組みは四国では初の事でした。
各学校での取り組み
新居浜市内の小・中学校では、各学校の特色を活かした、コミュニケーション能力や思いやりの心を醸成する活動と、ふるさと・環境・国際・福祉などのテーマにした学習をESDとして行っています。
各学校にESD主任を1人置き、学校で自主的なESD活動が継続的に行われるように毎日活動しています。
- 新居浜小学校
見つめよう 考えよう 未来へつなげよう ふるさと新居浜
~学校ビオトープを学びの中心に~
- 宮西小学校
地域とつながり 未来へはばたく みやにし
(人・文化・自然)
- 金子小学校
豊かな関わりの中で人とつながる魅力ある学校づくり
未来につなげよう! 金子愛顔の町プロジェクト~かかわる・つながる・ひろがる
- 金栄小学校
金栄いきいきプロジェクト ~地域の方々との交流を通じて~
- 高津小学校
ふるさと発見 つなげよう未来へ
- 浮島小学校
「共に生きる」
- 惣開小学校
自ら学び、自ら考え、持続可能な社会づくりに参画・貢献できる人材の育成
~学校と地域のパートナーシップを構築し、多様なステークホルダーとの協働により学校と地域をつなぐESD活動を通じて
- 若宮小学校
自己を拓き 広げよう ともに生きる力
- 垣生小学校
「社会」「自然」「歴史・文化」とのふれあいを通して
~命の尊さとともに生きることの素晴らしさを感じられる子~
《環境教育・防災教育・地域の歴史・文化》
- 神郷小学校
めざそう 神郷 E環境
- 多喜浜小学校
「多喜浜塩田を未来に伝えよう」
- 泉川小学校
「進めよう! エコ・アクション」
~地球環境を守るために、明るい展望をもって気付き、考え、実行する児童の育成~
- 船木小学校
ふれあい ~ふるさと船木の自然や人~
- 中萩小学校
「伝えよう! 地域のよさを」
- 大生院小学校
「つながり」を大切にする子どもの育成
~人・地域社会・自然との関わりを通して~
- 角野小学校
角野タイムトラベル
~ふるさとに誇りをもち、そのよさを発信していける子の育成~
- 別子小学校
「学校・地域文化の継承 自然から学ぶ」~ふるさとを守ろう ふるさとから学ぼう~
- 東中学校
『うぐいす運動』「美しく(う)、グリーン(ぐ)、いっぱい(い)、進んで奉仕(す)」
長年実施し、すでに地域に根差した環境美化・交通安全啓発・福祉活動等を現状に合うように検討し実践することで、時代に適応した持続可能な社会の担い手づくりを目指す。
- 西中学校
「地域を知り、人とつながり、未来を拓こう」
- 南中学校
「共生社会」の実現を目指し、自己の生き方を探ろうとする心豊かな生徒の育成
- 北中学校
『ふるさと学習』 ~地域を知り、地域に学び、地域に発信する~
- 泉川中学校
「地域や社会に生きる一員として、公けのために行動する」
- 船木中学校
環境の視点から、持続可能な発展を目指し、私たちはどのように行き抜けばよいのか考えよう。
- 船木中学校ひびき分校
「地域と連携した和太鼓活動」 ~地域に学び、自己の生き方を考える~
- 中萩中学校
「自立・共存・交流」~地域に学び、自己の生き方を考える~
- 大生院中学校
伝え合い学び合う生徒の育成 ~人・地域・自然との関わりを通して~
- 角野中学校
「大人になっても語ろう! 角野の誇り」
- 川東中学校
全校テーマ「地域の暮らしを見つめ、地域や社会の一員としてよりよく生きる」
1年 学年テーマ「暮らしの中の文化」
2年 学年テーマ「環境」
3年 学年テーマ「防災と福祉」
- 別子中学校
「学校・地域文化の継承」「自然から学ぶ」
~ふるさとを守ろう ふるさとから学ぼう~
あかがねミュージアムでもSDGsの取組みがスタート
教育長からあかがねミュージアムの館長へ、役職が変わっても阿部館長のSDGs・ESDへの想いは変わりません。
持続可能な地域に根差した美術館を目指して、どのような活動をするべきか考えた結果が「にいはまSDGsアート・フェスティバル」の開催でした。
アート展から様々な活動に派生していって欲しいという思いから「フェスティバル」と命名されています。
この企画展は、日本はもとより全世界の小・中学生に向けてアート作品を募集し、優れた作品には真鍋博や広瀬宰平など新居浜ゆかりの人物にちなんだ賞が授与されます。
市内小・中学校へも「強制ではなく自主的な応募」を尊重して案内を行っています。
作品のテーマは「SDGs」17の目標のうちのから選んだ一つ。
テーマを通じてイメージされたもの・こと・思いなら、どんなものでも自由となっています。
ちなみにあかがねミュージアムが美術館として作品を募集するのはこれが初めての事です。
「この企画展をきっかけに表現されたアート作品を通じて、地域・世界によって様々な課題があることを感じて欲しい、そして自分事として感じ取って行動して欲しい」と阿部館長は語っています。
これから始まるアート・フェス、あかがねミュージアムでの取り組みに目が離せません。