皆さん排便障害という言葉をご存知ですか?
便秘症や便失禁のことを指しますが、これまで医療現場であまり関心が高くなくなかったため、一般の方々の認知度が低く、病院を受診されず悩まれている方がたくさんいらっしゃいます。
日本では、便秘の方は1000万人、便失禁は65歳以上のかたのうち250万人いると言われています。
いずれの疾患も、日々の生活のなかで避けては通れない排泄行為が障害されるため、様々な問題が生じます。
実際に、便秘があると15年後の生存率が17%低下する(Chang JY, Gastroenterol. 2010)という報告があります(図1)。
また、便失禁の深刻さについて、70%近くの方が死と同等か更に悪いと考えていると言われており(図2)、生命予後や生活の質(QOL)に深く関わる重要な医療分野の一つです。
そこで医療の現場では、全国の医療レベルに差が出ないように、個々の疾患に関するガイドラインが発刊されています。
便秘症と便失禁に関しても2017年にガイドラインが登場したので、これに即した治療内容であれば、全国どこでも均一な標準的治療を受けることができます。
ただ実際は、排便障害ガイドラインに即した診療体制を整えている医療機関は全国でもめずらしく、多くの医師もガイドラインの内容を熟知しておらず、ガイドラインの存在すらまだ十分に知られていません。
ここ新居浜市でもそれは同様で、すこしでも地域の排便障害の診療レベルが上昇するために工夫している点を紹介します。
まずはチーム医療について。排便障害診療では、医師以外に看護師・栄養士・薬剤師・理学療法士・放射線技師などを含む多職種の方々の力が必要です。
それぞれの専門的な知識や技術を持ち合わせることで、たくさんの患者さんの悩みを解決することが可能になります。
そこで、十全総合病院の多職種の方と排便障害チーム「ロダン」を結成しました。
次に一般の方々への啓蒙活動として、毎年排便障害の市民公開講座や骨盤底筋運動の会を企画開催しています(図3 管理栄養士による調理解説)(図4 薬剤師による薬物治療の解説)(図5 骨盤底筋フィットネス)。
一般の方々に正しく排便障害の知識を身につけていただくことで、ご自身の症状の理解や早期予防などにつながります。
そして最後に、患者さんに専門的な診断治療が必要になったときに、医師が地域連携を通じてお互いに紹介しあえる関係を構築することです。
現在愛媛県内で医師や医療従事者を対象とした排便障害の講演活動を積極的に行っています。
消化器領域の先生やそれ以外の非専門領域の先生に正しく理解していただき、良いタイミングで専門的な医療機関に紹介できる体制を確立したいと考えています。
これらの活動を通じて、地域の方々の排便が少しでも楽になればと思います。
便秘も便失禁も、新しい治療方法が登場しています。お困りの症状があれば、ぜひ遠慮なく相談していただけたらと思います。